「穀(こく)」解説ページ
画像は秋田の友人からのプレゼントです。
「どうして、あんたはS社を辞めたの?」
と知人に、私が尋ねれば…。
その知人は
以下のように答える。
「企業に魅力がなくなったから」。
「どうして、企業に魅力がなくなったの?」
と、私が問い返せば…。
知人は次のように。
「企業に人がいなくなったから」。
「どうして、企業に人がいなくなったの?」
と、私がさらに問い返せば!
と、知人と私の問答は、さらに続くのですが
この続きは、後段に譲り…。
先ずは、『論語中』 吉川幸次郎(著) 中国古典選4
朝日文庫からの引用を主に始まる、以下の
「憲問けんもん 第十四」 第1章を篤とくとご覧あれ~♪
最初に、訓読(読下し文)を。
憲けん、恥はじを問とう。
子し曰いわく、
邦くに道みち有あれば穀こくす。
邦くに道みち無なきに穀こくするは、
恥はじ也なり。
次に、現代訳を。
弟子の原憲げんけんが、「恥」について、孔子に尋ねた。
孔子が答えた(先生のお言葉である)。
「国家に道徳があれば俸禄を貰う。
国家に道徳が無いのに俸禄を貰うのは
恥である」と。
続いて吉川博士の解説を。
・原憲が恥じを問うた。
恥ずべき行為とは何であるか、を問うた。孔子の答え。
その国家が道徳国家である場合にこそ、
官吏として俸禄を貰うがいい。その国家に道徳のない場合にも、
俸禄を貰うのは、恥じである。以上は古注の解釈である。
・新注は、国家に道徳のある場合にも俸禄を貰い、
道徳のない場合にも俸禄を貰う、
とにかく、何でもいいから俸禄だけを貰う、
というのは恥じである、とする。したがって新注系の和訓は、「邦道有るに穀し、
邦道無きに穀するは、恥じ也」となっている。しかし、徂徠がいうように、
古注の方が、よろしいであろう。・さきの泰伯第八の「天下道有れば則ち見あらわれ、
道なければ則ち隠る。
邦に道有るに、貧しくして且つ賤しきは、恥じ也、
邦に道無きに、富みて且つ貴きは、恥じ也」(第13章)
とあわせ考えれば、邦に道有るときは、むしろ積極的に、
「穀」すなわち俸禄を貰って、はたらくべきである。
あれっ、
冒頭の知人も、
この一章の解釈(現代訳)と同じようなことを…。
ちなみに、知人が私に語った
彼の退職事由の要旨は、以下の通り。
「企業に魅力がなくなった→人がいなくった」
その理由として、知人は以下のような言葉を。
「社長がワンマンで、
会社の金をポケットに入れてしまう。
それを皆が、見て見ぬ振りをして、
誰も、忠告・注意する人がいない」。
すなわち、法人でありながら、
オーナー社長が会社の金を私的に流用する。
それに対して、役員を含めた、全社員の誰もが
何も言わない、言わせない企業風土になっている。
つまり、企業にモラル(moral 道徳)も
モラール(morale 志気)も感じられなくなった。
そんな企業に生活(=給料。お金)のためとはいえ、
勤め続ける自分がみじめで嫌になった。
だから、彼はその企業を辞めた(退職した)と、
私に語るのであった…。
ちなみに、この一章の語句を『角川新字源』にて
上から順に音読みで、検索した結果はといえば…、
以下の語句のみ。
【穀】コク 意味②ふちまい。俸禄ほうろく。扶持米ふちまいを受ける。〔論・憲問〕「邦有道穀」
では、あなたにお伺いします。
モラル(道徳)もモラール(志気)も感じられなくなった企業に
「他社よりも給料がいいから」という理由だけで、
あなたは勤め続けることが出来ます?
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